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コラム 2024年02月19日

糖尿病治療の基本

糖尿病治療の基本

小島薬局筒井町店の原田です。
毎年、健康診断に行かれている方も、そうでない方も血糖値を気にされているのではないでしょうか?血糖値が高いと疑われる疾患が皆さんご存知の「糖尿病」です。

令和元年の厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、「糖尿病が強く疑われる者」の割合は男性 19.7%、女性 10.8%だそうです。
年齢が高い層でその割合が高くなっていることが報告されており、日本ではかなり身近な疾患といえます。
今回は「糖尿病治療の基本」がテーマです。

糖尿病とは

糖尿病は血液中のブドウ糖(血糖)が増えてしまう慢性的な疾患です。
血糖が増えすぎないよう調節するホルモンであるインスリンが、十分に分泌されなかったり、効きが悪くなったりすることで生じ、1型、2型などの分類があります。

糖尿病の治療法

糖尿病の治療は血糖値を管理することで合併症の発症・悪化を予防し、健康でいられる期間を長く維持することを目指します。
治療の方針は糖尿病の型、病態、年齢、合併症の程度などによって異なります。
早急な血糖降下を必要としない方は、まず食事・運動療法から始まります。2〜3か月経っても効果がみられない場合は血糖値を下げる治療薬が追加となります。

食事療法

適切なエネルギー摂取量で栄養バランスの取れた、規則正しい食事を行います。

運動療法

有酸素運動や筋トレを行うことでインスリンの効きにくさを改善します。ただし、その効果は運動をやめると3日で元に戻ってしまうとされています。
※併存疾患や体の状態によっては食事・運動に注意が必要な場合があります。食事・運動療法の方法については主治医の説明をよく聞き、確認してください。

様々な治療薬

糖尿病治療薬は医師が患者さんの糖尿病や体の状態をみながら、適切なものが選択されます。

  • インスリンの分泌を促す
    SU薬
    血糖降下作用は強く、糖尿病治療薬の中でも特に血糖値が下がりすぎてしまうことで生じる低血糖症状に注意が必要です。
    食事・運動管理が十分にできており、インスリン分泌量が少なく、空腹時の血糖値が高い方に使用されます。
    食前(20-30分前)または食後(30分以内)に服用します。
    <飲み忘れた場合>
    その回の服用を避けましょう。
    グリニド薬
    SU薬と同様のメカニズムで働きますが、効きが早く、短時間で作用するので、食直前(5-10分前)の服用により食後の高血糖を改善します。
    食後の血糖値が高い方に使用されます。
    <飲み忘れた場合>
    食直前に飲み忘れた場合はその回の服用を避けましょう。また、服用が30分前など早すぎる場合、食事開始時に低血糖症状が生じる可能性があります。食事の支度をし、「いただきます」の直前、または同時のタイミングで服用すると良いでしょう。
    インクレチン関連
    インクレチンとは、血糖値が上がると小腸から分泌されるホルモンの総称で、インスリンの分泌を促し、血糖値を上げるホルモンの分泌を抑える作用があります。
    SU薬やグリニド薬と異なり血糖値が高いときに効果を発揮するため、単独で低血糖が生じにくいです。
    DPP-4阻害薬
    インクレチンが分解されるのを防ぎます。
    1日1回、1日2回、週1回服用の薬剤があります。
    単独で低血糖を起こしにくく、HbA1c(過去1-2か月の血糖値の平均の指標)が高いあらゆる方に使用されます。また種類を選べば腎臓の弱い方にも使用できます。
    <飲み忘れた場合>
    1日1回製剤:当日内で飲み忘れに気づいた時点で服用しましょう。
    1日2回製剤:朝分は昼までに、夕分は寝る前までなど、次の服用時間が近かった場合はその回は服用を避けましょう。
    週1回製剤:気づいた時点で服用し、次回以降は決められた曜日で服用を継続しましょう。同じ日に2回分服用しないでください。
    GLP-1作動薬
    インクレチンと同じように働きます。脳や胃腸に作用し、食欲を抑制し、体重減少にも寄与します。
    副作用として吐き気、下痢、便秘などの胃腸障害が生じる可能性があります。
    内服薬と注射剤があります。
    内服薬(リベルサス):胃の内容物により吸収が低下するため、1日のうちの最初の食事または飲水の前に、空腹の状態でコップ約半分の水(約120mL以下)とともに1錠飲み、少なくとも30分は、飲食および他の薬の服用を避ける必要があります。
    飲み忘れた場合、その日は服用せず、次の日から再開します。
    注射薬:1日1回、1日2回、週1回の製剤があります。
  • インスリンの効きをよくする
    ビグアナイド薬
    肥満2型糖尿病患者に対する大血管症(脳梗塞、心筋梗塞等)を抑制するとの報告があります。1日に1-3回内服します。
    ヨード造影剤を使用したCT・MRI造営検査の際は薬を休む必要があります。脱水やアルコールの飲みすぎで乳酸アシドーシスという副作用のリスクが高まるので注意が必要です。
    <飲み忘れた場合>
    1日1回:当日内で飲み忘れに気づいた時点で服用しましょう。
    1日2回:朝分は昼までに、夕分は寝る前までなど、次の服用時間が近かった場合はその回は服用を避けましょう。
    1日3回:次の服用時間が近かった場合はその回は服用を避けましょう。
    チアゾリジン薬
    インスリンの効きにくさを改善します。
    体液貯留によるむくみに注意が必要です。心不全の方には使用できません。
    体重の増加しやすいため、食事療法をしっかり行いましょう。
    <飲み忘れた場合>
    飲み忘れた場合は当日内であれば服用しましょう。
  • ブドウ糖の吸収を遅らせる
    α-グルコシダーゼ阻害薬
    インスリンの効きにくさを改善します。
    腸で食事からの糖の吸収を遅らせます。食直前(5-10分前)の服用により食後の高血糖を抑制します。低血糖時は通常の砂糖は吸収が遅れてしまうため、ブドウ糖で対処する必要があります。
    食後の血糖値が高い方に使用されます。
    <飲み忘れた場合>
    食事中に飲み忘れに気づいた場合はすぐに服用し、食後に気づいた場合はその回は服用しないようにしましょう。
  • ブドウ糖を排泄する
  • SGLT2阻害薬
    尿の中に糖を出して排出することで血糖値を下げます。尿量が増え脱水が生じる可能性があるため十分な水分補給が必要です。尿中に糖が排出されるため、尿路感染症に注意が必要です。作用の性質上、尿糖の検査は陽性となります。
    腎保護、心保護作用により、種類によっては慢性心不全や慢性腎臓病の適応があります。
    尿量が増える可能性があるため、夜ではなく朝に服用します。
    <飲み忘れた場合>
    当日内であれば服用できますが、夜に内服でトイレで目が覚めてしまう可能性があります。
  • インスリン製剤
    体内のインスリンと同様の作用を持ちながら、作用の持続時間を調節したもので、超速効型、速効型、持効型、中間型、混合型など様々な製剤があります。
  • 配合剤
    糖尿病治療に使用される内服薬、注射剤には2つの成分を一つの薬にまとめた配合剤が存在します。
    メリット:使用回数が減る、飲み忘れが少なる、医療費が安くなる等が挙げられます。
    デメリット:使用量の細かい調整が難しくなる、一部錠剤のサイズが大きくなる等が挙げられます。
  • 近年増えた薬
    イメグリミン(ツイミーグ)
    ミトコンドリアへの作用を介して血糖降下作用をあらわすとされています。
    GIP/GLP-1作動薬(マンジャロ)
    GIPやGLP-1といったインクレチンと同じように働きます。

※糖尿病治療薬はそれぞれに特有の特徴や注意点があります。医師や薬剤師の説明を聞きよく理解しましょう。

糖尿病には早めの対策を

ここ10数年で糖尿病治療薬は種類が増え、選択肢の幅が広がっています。治療薬にはそれぞれの特徴や注意点があるため、医師や薬剤師からの説明をよく聞いて、正しく治療していきましょう。
前述した通り、糖尿病は自覚症状に乏しいため、薬を飲み忘れが多くなってしまったり、食べ過ぎてしまったりなど、治療がおろそかになってしまう方が見受けられます。まれに治療を中断していて状態が悪化し、久しぶりに治療再開するという方もいます。糖尿病による合併症は数年〜数十年の経過でゆっくりと進行していきます。早期に気づき治療を開始することで、年齢を重ねても長く健康に過ごせるように、健診などで高血糖の指摘を受けた方や、理由なく治療を中断している方は、体調が悪くないからと放置はせず、検査や定期的な受診を行い、早期の対策を心掛けましょう。

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