皆様こんにちは、小島薬局漢方堂の鈴木です。
厳しい猛暑もようやく落ち着き、少しずつ過ごしやすい陽気の日が増えてきましたね。スポーツの秋という言葉にふさわしく、気持ちよく運動できる気候になってきました。
今回のコラムはスポーツと漢方というテーマでお話させて頂きます。
運動をすると汗をかくことは自然な生理現象ですが、漢方ではこの「汗」という現象をとても重視します。
「汗」はただの水分ではなく「気」と「津液(しんえき)」という身体にとって重要な物質が結びついてできたものというのが漢方の考え方です。
「気」は元気の源であり、生命活動の為の重要なエネルギーです。「気」が不足すると、身体が怠くて動けない、疲れやすい、気力がわかないなど活力が低下してしまいます。また「気」の不足は持久力の低下を招き、運動パフォーマンスにも大きく影響します。
「津液」は身体を構成する重要な水分です。ただの水ではなく、生命活動に必要な栄養も含まれています。皮膚や筋肉に潤いと栄養を与え、しなやかで柔軟な筋肉の形成にも関わります。津液を消耗すると、筋肉は固く柔軟性を失い、けがをしやすくなったりします。
漢方では運動によって大量に汗をかくと、体の水分だけでなく、元気の源である「気」も一緒に流れ出てしまうと考えられています。従って大汗を伴う運動をした後は「気」と「津液」のケアをすることがとても重要であり、その目的で麦味参(バクミサン)という漢方薬がよく使われます。
麦味参は人参、麦門冬(バクモンドウ)、五味子(ゴミシ)という3種類の生薬から構成されています。人参は「気」を補う働きにとても優れ、五味子と麦門冬は身体に潤いを与えます。発汗によって失われた「気」と「津液」を補う働きがあるので、汗をたくさんかいた後はこの麦味参がおすすめです。また処方全体を通して心肺機能の向上や運動後の疲労軽減にも効果が期待できます。夏場の熱中症対策としてよく使われる漢方ですが、スポーツの秋にも欠かせない漢方薬です。
運動意欲がわいたときは身体へのケアも忘れず、無理のない範囲でスポーツを楽しんでください。